植物に含まれるポリフェノール、アルカロイドなどの微量栄養素をファイトケミカルまたはフィトケミカル(Phytochemical,野菜の化合物)と言います。ポリフェノールは、フェノールC6H5OHが複数結合した有機化合物で、動植物において様々なホルモンや神経伝達物質として作用します。アルカロイドは、アルカリ性(塩基性)の有機化合物です。いずれも抗酸化作用があるORAC食品とされます。
漢方薬やハーブ類にも様々なファイトケミカルが含まれ、有史以来人類はこれを生薬(アジアでは漢方薬)として活用してきました。ファイトケミカルは、植物が生き延びるために長い進化の過程で獲得してきた武器のようなものです。人類はこれを食べることにより植物から武器を貰っているのです。野菜を食べることは、脳を守るための武器を補給することに他なりません。様々な種類の野菜類を、どんどん補給しましょう。食事で野菜を食べないことは、このチャンスを失っているのと同じことです。
「君がため 春の野にいでで 若菜つむ わか衣手に 雪は降りつつ」光孝天皇、百人一首
「せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞななくさ」四辻善成、河海抄
このように日本人は、古来ファイトケミカルを食生活に取り入れて来ました。主食だって、精白米だけを食べるような習慣は無く、稲に、麦、ヒエ、アワ、キビ、ゴマ、小豆、蓑を混ぜて食べていました。
※参考書籍、
「食べ物で健康になりたい人が読む本」藤田きみゑ、創元社
脳神経作用を有するファイトケミカル
イチョウ葉エキス・・・認知記憶力を改善することが示唆されています。抗うつ作用を持つ可能性指摘。
※咀嚼による脳の活性化
硬い食べ物や、ガムを噛むことが認知症予防に効果があるという実験があります。子供の発達にも良いでしょう。イチョウ葉エキスのガムには、咀嚼とイチョウ葉の両方の効果が相乗作用することが期待されます。
クルクミン・・・カレーの成分、ターメリック(ウコン)に含まれるポリフェノール。インドの認知症患者はアメリカの4分の1という報告もあります。週に1回はカレーを食べましょう。
※ピッツバーグ大学の論文「インド農村部におけるアルツハイマー発症率」
インド農村部のアルツハイマー認知症発症率は1000人年当たり65歳で3.24人、55歳で1.74人だったが、1990年米国国勢調査の年齢分布で標準化すると、65歳における発症率は1000人年当たり4.7人でした。米国ピッツバーグ近郊では1000人年当たり17.5人でした。インド農村部の伝統的食生活や化学物質に接触しない生活が脳の健康に役立つ可能性があります。
ヘスペリジン・・・温州みかんやはっさく、ダイダイなどの果皮および薄皮に多く含まれるフラバノン配糖体(フラボノイド)。ポリフェノールの一種。漢方薬陳皮の主成分。欠乏症が無いのでビタミンでは無いが、発見当初はビタミンPと提唱されていたビタミン様物質。
ゴツコラ・・・和名ツボクサ。セリ科の多年草。中国やインドやベトナムで脳や長寿に効く薬草として使われてきました。インドの伝統医学書アーユルヴェーダでは神の智恵をもたらすものと呼ばれています。ハーブティーとして摂ると良いでしょう。
マカ・・・南米原産の強壮剤ですが、女性にもホルモンバランスを整える働きがあるとされます。
ローズマリー・・・「思い出の花」と呼ばれ、記憶力を高める作用があると言われてきました。和名「万年朗」永遠の青年という意味です。ローズマリー蜂蜜や、ローズマリーチキン、ハーブティーで摂取しましょう。
レモンバーム・・・サプリメントによる実験では記憶力を高める作用が確認されています。ハーブティーで、リラックス安眠効果も。
ペパーミント・・・英国ノーザンブリア大学の研究で、ペパーミントハーブティーで記憶力と注意力向上が確認されました。
セージ・・・軽度アルツハイマー病患者に対する有効性や、成人若者の記憶力や気分評価の改善に有効であるとの論文があります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12605619
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12895685
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15639154
カフェイン・・・中枢神経刺激食品。過剰摂取に注意して摂りましょう。
クロロゲン酸&トリゴネリン・・・浅煎りコーヒーに含まれるファイトケミカル。ストレス軽減作用、糖尿病予防効果が期待される。コーヒーをよく飲む人はうつ症状を呈しにくいという報告。認知症予防効果も。
ネオクロロゲン酸・・・プルーンに含まれるファイトケミカルで、抗酸化作用が期待されます。代謝副産物である活性酸素が、細胞内の分子を酸化させ損傷を与えてしまいます。抗酸化物質は活性酸素と結合することにより活性酸素を不活化させます。
※カリフォルニアプルーン協会の解説pdf
https://www.prune.jp/wp/wp-content/themes/prunes/pdf/neo.pdf
※国立がん研究センター論文概要
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/352.html
ココア、チョコレート・・・中枢神経刺激食品。カカオの学名はテオブロマカカオ、これは神の食べ物カカオという意味です。チョコレートを求める場合はカカオ70%以上のものを買いましょう。カレドショコラ88を推奨します。ハイカカオチョコレートに慣れていない場合は、これを「美味しい」という感覚が持てないかもしれませんが、定期的にハイカカオのチョコレートだけを食べ続けて行けば、自然と美味しく感じることができるようになるはずです。カカオポリフェノールがBDNF(脳由来神経栄養因子)を増加させるという研究もあります。カカオに含まれるテオブロミンという有機化合物も中枢神経刺激作用があると言われています。
※明治製菓HP、カカオポリフェノールの健康効果について
カテキン・・・緑茶の旨味成分であるポリフェノール。抗ストレス作用、精神安定作用、リラックス作用、鎮静作用、整腸作用があるとされます。緑茶をよく飲む人はうつ症状を呈しにくいという報告があります。
リラックスハーブ・・・バレリアン(カノコソウ、ハルオミナエシ)、レモンバーム(メリッサ)、ラベンダー、パッションフラワー(トケイソウ)、カモマイル(カミツレ)、エルダーフラワー、ホップ(ビールの原料、カラハナソウ)、リンデンフラワー(ライム)。睡眠の質を高める作用も。
ロツシン・・・蓮の実に含まれるアルカロイド。鎮静、滋養強壮などの作用があるとされます。蓮の実茶や、蓮餡(蓮蓉)月餅などで摂りましょう。
アピゲニン・・・パセリやセロリに含まれるフラボノイド。抗炎症作用、神経保護作用を有し、アルツハイマー病の予防可能性が指摘されています。
免疫力を高めるファイトケミカル
※がん予防と食品、名古屋大学大学院生命農学研究科大澤俊彦氏の論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/20/1/20_1_11/_pdf
米国デザイナーフーズ計画によるガン予防の第1群食品=ニンニク、リコリス、キャベツ、大豆、ショウガ、セリ科植物(ニンジン、セロリ)
スルフォラファン・・・ブロッコリースプラウトに含まれる、免疫賦活物質。
カプサイシン・・・唐辛子、シシトウに含まれる、代謝を高め、脂肪分解を促進するファイトケミカル。
エキナセア・・・アメリカインディアンが風邪薬として使っていた免疫賦活ハーブ。
エルダーフラワー・・・ドイツの風邪薬、セイヨウニワトコ。
リコリス(カンゾウ)・・・米国デザイナーフーズ計画で、抗ガン作用第1群。
ジンゲロール・・・ショウガに含まれる、抗アレルギー作用、抗炎症作用を持つファイトケミカル。
リコピン・・・トマトに含まれる、抗酸化作用、ガン予防作用、糖尿病予防作用を持つファイトケミカル。
アリシン・・・ニンニクに含まれる、殺菌作用、免疫賦活作用を持つファイトケミカル。
カロテン・・・ニンジン、カボチャ、モロヘイヤに含まれる。免疫賦活作用を持つファイトケミカル。
ムメフラール・・・梅肉を加熱すると生成されるファイトケミカル。古来「焼き梅」として民間風邪薬として使われてきました。梅エキス、梅肉エキスとして購入できます。免疫向上、血流改善効果が指摘されています。
抑肝散(ヨクカンサン)・・・古来、子供の癇癪に適応されてきた漢方薬。神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症などが効能とされています。近年の研究で、うつ病、認知症への効果も期待されています。抑肝散加陳皮半夏にも同様の効果が期待されています。
遠志(オンジ)・・・イトヒメハギ(糸姫萩、ヒメハギ科の多年草)が使われた漢方薬。物忘れ対策の効能が認められた漢方薬。3類医薬品です。
セントジョーンズワート・・・セイヨウオトギリソウ(西洋弟切、オトギリソウ科の多年草)のハーブ。弱いSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害)作用があると言われています。つまりセロトニンが増えるのですね。軽いうつ傾向の場合は、これを使ったサプリメントを、パッケージに書かれた用法量の半分とか4分の1を毎日飲むだけで、2週間程度で改善を実感できることがあります。
ヤマイモ・ナガイモに含まれる配糖体ジオスゲニンによる健常人の認知機能向上効果を認める研究があります。
※富山大学のプレスリリース
https://www.u-toyama.ac.jp/education/news/2017/1030.html
※日本三大薬草
・センブリ
・ドクダミ
・ゲンノショウコ
※沖縄三大薬草
・クミスクチン(ねこのひげ)
・グアバ
※参考記事