糖質は、炭水化物つまり、水に炭素が化合された物質です。植物が光合成で、水と二酸化炭素から造り出すのがグルコース=C6H12O6、つまりブドウ糖です。干しブドウから最初に見つかったのでブドウ糖と言うんだそうです。ブドウ糖は脳神経細胞のエネルギーになりますし、分解されATP(アデノシン三リン酸)となり、これが筋肉のエネルギー源ともなります。つまり、考えたり体を動かしたりするのに必要な基本栄養素です。
グルコースなど加水分解されない糖を単糖と言います。単糖が2つ合体したものが二糖類、3つ合体すると三糖類と言います。糖が3つ以上合成されたものをオリゴ糖と言い、10個以上合体すると多糖類と呼ばれます。コメなどに含まれるデンプンも多糖類です。
トリプトファン摂取
日本人にとって主な炭水化物(主食)は勿論「コメ」ですが、神経伝達物質セロトニンの材料となるアミノ酸であるトリプトファンはコメにはほとんど含まれていません。トリプトファンを摂取するには、小麦粉や蕎麦を食べなければなりません。日本人は昔から「コメ」以外の雑穀類も沢山食べており精白米だけを食べるような習慣はありませんでした。現代日本人も脳を元気にするために、昔の人を見習って精白米だけの食事を改め、玄米とか小麦粉とか蕎麦とか雑穀類も食べるようにしなければなりません。「脳にいい食事大全」の著者で栄養コンサルタントのミシェル・ショーフロ・クックは「精製された穀物は砂糖と同じ」という名言を残しています。
そもそも人類は紀元前9000年前に農業革命を成し遂げるまで狩猟採集民の生活を200万年以上も続けており、炭水化物を主食とする食生活はしたことがありませんでした。人類の遺伝子は農業革命後の生活に適合しきれていないのです。
エンプティカロリー
清涼飲料水や菓子類スイーツや揚げ物など、糖質・脂質によるカロリーばかりでビタミン・ミネラル・抗酸化物質などの栄養素の少ない食品を「エンプティカロリー」と言います。カロリーはどんな食品にも含まれますし必要なものですが、他の栄養素にも常に注意を払うべきです。炭水化物以外の栄養素が不足している状態を「新型栄養失調」と言います。注意したいものですね。
https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/understanding-empty-calories
https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/171.html
スーパーフード
ちなみに、エンプティカロリーの反対語は、「スーパーフード」です。カロリー当たりの栄養素が豊富な食材として、チアシード、ゴマ、スピルリナ、マカ、クコの実(ゴジベリー)、ウコン、カカオ、ココナッツ、アボカド、アサイー、カムカム、ブロッコリースプラウト、ブラックシード、麻の実(ヘンプ)、サフラン、トウガラシ、シソ、抹茶、わさび、山椒、胡椒、ヒハツ、はと麦、鶏卵などが挙げられます。体の中で働く仕組み(作用機序)の詳細は分かっていませんが、栄養豊富なのですから、スーパーフードはブレインフードと思って摂取しましょう。
参考URL、一般社団法人日本スーパーフード協会
http://www.superfoods.or.jp/
はくばく、十六穀ごはん
superfoodsjapan、チアシード
GI値を意識せよ
炭水化物を摂る場合に重要なのが、GI(グリセリミックインデックス=食品ごとの血糖値の上昇度合いを指数化したもの)です。これはブドウ糖に比較した血糖値の上がりやすさを示す数値で、ブドウ糖と同じなら100、ブドウ糖の半分なら50ということになります。
※オーストラリアGI基金
※シドニー大学GIページ
※パナソニック、ダイエットナビ
http://club.panasonic.jp/diet/calorie_control/gi/foodlist.html
GI値リスト
白パン、GI値75
全粒粉パン、GI値74
フランスパン、GI値57
ライ麦パン、GI値49(プンパニッケル)
精白米、GI値73
玄米、GI値68
うどん、GI値62
十割そば、GI値53
スパゲティ、GI値49
全粒粉スパゲティ、GI値48
コーンフレーク、GI値81
ジャガイモ、GI値78
サツマイモ、GI値63
カボチャ、GI値64
葉物野菜、GI値15
人参、GI値39
海藻類、GI値17
寒天、GI値12
スイカ、GI値76
パイナップル、GI値59
バナナ、GI値51
マンゴー、GI値51
オレンジ、GI値43
モモ、GI値43
リンゴ、GI値36
キウイ、GI値35
イチゴ、GI値29
普通牛乳、GI値39
低脂肪乳、GI値37
ヨーグルト、GI値41
豆乳、GI値34
グルコース=ブドウ糖、GI値100
スクロース=砂糖、GI値65
輸入ハチミツ、GI値61
イソマルツロースまたはパラチノース、GI値44
国産アカシアハチミツ、GI値40
フルクトース=果糖、GI値15
GI値が低い食品は「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」が豊富な食材です。ヤマイモ、ナガイモ、ライ麦全粒粉パン、バナナ、コーンフレークなどです。
BMI値を意識せよ
糖質=炭水化物の摂取を考える場合に、摂取量を調整することが一番大事だと思います。具体的にはBMI値(Body Mass Index、体格指数)を調整することが必要です。糖質の摂りすぎは肥満メタボに直結すると認識して下さい。
※参考URL=カシオの計算サイト
http://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732
BMI=体重kg ÷ (身長m)2
たとえば170cmで62キロの人のBMIは、62÷1.7÷1.7=21.45
WHOでは、国際的な標準体重の基準としてBMI18.5から24.99までを定義していますが、アジア人の場合は24.99以下でも糖尿病や心臓病のリスクが高まる可能性があるとして、BMI18.5から22.99という新たな基準を考慮する可能性について議論しています。勿論我々日本人はアジア人ですから、18.5から22.99というWHOの新しい基準を考慮すべきでしょう。この基準の中央値は、(18.5+23)÷2=20.75となります。糖尿病患者は認知症のリスクが2倍に高まるという報告もあり、肥満はうつ病リスクを1.5倍に高めるという研究もあります。
特に成人で認知症や鬱病でお困りの場合は、あれこれ考えるより先にBMIを20.75まで、まず持って行きましょう。「糖尿病に良い」=「脳に良い」と認識しましょう。
血糖値を下げる食材=ゴーヤ(ニガウリ)、キノコ、タマネギ、納豆、コンニャク、コーヒー、緑茶など
適正体重=身長m×身長m×20.75kg
たとえば170cmの日本人の適正体重は、1.7×1.7×20.75=59.97kg となります。
175cmの場合、1.75×1.75×20.75=63.54kg
165cmの場合、1.65×1.65×20.75=56.49kg
160cmの場合、1.60×1.60×20.75=53.12kg
155cmの場合、1.55×1.55×20.75=49.85kg
※WHOの参考レポート=アジア人に適切なBMI分類について
http://www.who.int/nutrition/publications/bmi_asia_strategies.pdf
糖質制限ダイエット
BMI20.75は、軽い糖質制限食、つまり、ごはん茶碗を子供用など小さいものに代えれば達成できます。ランチの炭水化物をオニギリ1個にしたり、夕食のゴハンを無しにするという方法(プチ糖質制限ダイエット)も推奨します。炭水化物は、タンパク質や脂質や食物繊維など他の栄養素と一緒に摂取した方が食後血糖値の上昇を抑えることができるという実験があります。炭水化物を最後に食べる「カーボラスト(ベジファースト)」の考え方も少しずつ浸透してきています。「必須アミノ酸」「必須脂肪酸」というものはありますが、「必須炭水化物」「必須糖質」というものはありません。人体には「糖新生」という脂肪酸やタンパク質からグリコーゲンを生合成する仕組みがあり、ヒトは炭水化物を摂らなくても生き延びることができるように造られているわけです。
※参考論文、久山町の悲劇と糖質制限法 糖質制限は人類本来の食事、人類の健康食、江部康二
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/26/1/26_47/_pdf
毎日2回、体重を計るだけの「計るだけダイエット」「体重計乗るだけダイエット」というダイエット法があるそうです。これは自分の体重を定期的に意識することにより食事量や運動量に自然にフィードバックされるという仕組みのようです。
※計るだけダイエット考案者北折一氏の記事
http://www.kitaori.jp/MyJobs_files/croissant01.pdf
なお、厚生労働省の食事摂取基準2015年版では、目標BMIの下限を70歳以上で21.5に設定しています。これは、サルコペニア(筋力低下)とフレイルティ(老衰)防止の観点で、BMI=21以下は好ましくないという判断のもとに修正されているものです。
糖の吸収を阻害する天然ハーブであるギムネマやサラシアを利用することも検討して下さい。やり過ぎると低血糖症になり眠気の副作用が出てしまいますので、1日1回夕食前に摂取するのがお勧めです。
ファンケル、カロリミット
小林製薬、サラシア100
アメリカの医学雑誌ランセットに、カナダ・マクマスター大学のMahshid Dehghan博士らによる、炭水化物の過剰摂取が全死亡率向上リスクを高めるという論文が掲載されました。「高炭水化物摂取量は全死亡率を高めるリスクがあるが、総脂肪摂取及び個別脂肪酸量は全死亡率の低下に関連していた。総脂肪および個別脂肪酸量増加は、心血管疾患、心筋梗塞、または心臓血管疾患の死亡率に関連していなかったが、飽和脂肪酸摂取量は脳卒中発症率と逆相関していた。これらの知見に照らして、世界の食生活ガイドラインを再検討すべきである」ということです。
※ランセット、論文概要
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)32252-3/abstract
糖分を摂取する場合に、「オリゴ糖」や「希少糖」を摂取することも検討して下さい。いずれもブドウ糖や砂糖よりも、消化されにくく、カロリーが低い糖分ですが、腸内細菌のエサになったり、血糖値の上昇を抑えたりする機能が研究されています。オリゴ糖は「てんさい糖」に多く含まれています。砂糖の袋を買うなら「てんさい糖」の袋を買いましょう。そして、補助的に希少糖のシロップも利用すると良いでしょう。
低FODMAP食
現代病とも言われるIBS過敏性腸症候群など、腸の不調を感じている場合は、食物繊維やヨーグルトの摂り過ぎを見直すべきであるという研究があります。発酵性のFermentable、オリゴ糖のOligosaccharides、二糖類のDisaccharides、単糖類のMonosaccharides、And、糖アルコールのPolyols、略してFODMAPを控える食事療法です。これは概して、欧米式小麦食よりも、和食の米食の方が好ましいという食事法です。それは日本人が慣れ親しんだ食事法でもあります。
Fermentable発酵性・・・ 未消化の炭水化物を発酵させてガスを発生させる。ヨーグルト、キムチ、漬物などの乳酸菌。
Oligosaccharidesオリゴ糖・・・ フルクタン、ガラクトオリゴ糖(小麦、ライ麦、タマネギ、ニンニク、豆類、食物繊維)
Disaccharides二糖類・・・ラクトース乳糖(牛乳、ヨーグルト、柔らかいチーズ)
Monosaccharides単糖類・・・フルクトース果糖(ハチミツ、リンゴ、コーンシロップ)
Polyols糖アルコール・・・キシリトール、ソルビトール、マンニトール(人工甘味料など)
※参考記事
低FODMAP食
※参考書籍
ブドウ糖とカロリーは変わりませんが、吸収が遅い糖分として「イソマルツロースまたはパラチノース」、「トレハロース」も取り入れて下さい。パラチノースはグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した二糖で、ハチミツに微量含まれている糖分です。トレハロースは、キノコ類に含まれる二糖で、血糖値の上昇を抑える性質があります。
ロハスタイル、エリスリトール
太田胃散 希少糖Gold 400g
味の素、おなかすこやかオリゴ