脂質

Blausen.com staff (2014). "Medical gallery of Blausen Medical 2014". WikiJournal of Medicine 1 (2). DOI:10.15347/wjm/2014.010. ISSN 2002-4436.脂質は脂肪酸(カルボキシル基=COOHに炭化水素が鎖のように繋がったもの)の集まりです。食酢に含まれる酢酸CH3COOHが最もシンプルな脂肪酸です。脂肪酸は細胞膜に多く含まれ、細長い細胞膜を持つ神経細胞には多く含まれています。脳の6割は脂肪でできていると言われ、脂肪酸は脳にとって極めて大事な栄養素です。脂肪酸は、カルボキシル基に炭化水素が何個繋がっているか、どのように繋がっているかで区別されます。

脂質に関する書籍リスト

炭素原子が1個ずつ電子を出し合って2個の電子を共有して結合しているものを飽和脂肪酸と言い、炭素原子が2個ずつ電子を出し合って4個の電子を共有しているものを不飽和脂肪酸と言います。不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸に比べて融点が低くなります。カルボキシル基に繋がっている炭化水素CH2の数が、6個以下のものを短鎖脂肪酸、7~12個のものを中鎖脂肪酸、13個以上のものを長鎖脂肪酸と言います。鎖が長くなればなるほど融点が高くなりヒトの体内で凝固しやすくなります。

太りやすい栄養素

脂肪酸も代謝によりATPに分解されヒトのエネルギー源となります。炭水化物やタンパク質は1gあたり4キロカロリーですが、脂質は1gあたり9キロカロリーのエネルギーがあります。太りやすい栄養素ということになりますので注意して摂取する必要があります。外食の揚げ物は脳に良くないのです。揚げ物を日常生活から除外しましょう。例えば、友人知人などとの会食以外では揚げ物を食べない作戦も考えられます。

炎症と脂質の関係

ヒトの体内で合成できない脂肪酸を必須脂肪酸と言います。ω3脂肪酸と、ω6脂肪酸が必須脂肪酸です。ω3(オメガスリー)というのは炭素の鎖の3番目が二重結合(不飽和結合)になっている脂肪酸ということです。現代人はω3不足、ω6過多の状態となっており、不安障害や慢性炎症などの現代病の原因とされています。ω3(魚類)を増やしてω6(揚げ物)を減らす工夫をしましょう。

※参考論文
https://www.ncnp.go.jp/press/press_release140313.html
https://www.amed.go.jp/news/release_20190905-03.html

ω7パルミトレイン酸は体内合成できるので必須脂肪酸には分類されていませんが、マカダミアナッツの積極摂取によりLDLコレステロールを低下させ血行改善効果が期待できます。ω9オレイン酸は体内合成できるので必須脂肪酸には分類されていませんが、オリーブオイルの積極摂取によりコレステロール値の低下や心血管疾患のリスク低下が示唆されています。

※国立健康栄養研究所、ω7パルミトレイン酸(マカダミアナッツ)、ω9オレイン酸(オリーブ)の有効性情報
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail3738.html
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail493.html

ω3脂肪酸
エイコサペンタエン酸(EPA)・・・心疾患予防機能。魚類など。
ドコサヘキサエン酸(DHA)・・・記憶力向上機能。魚類など。
αリノレン酸(ALA)・・・えごま油、あまに油、シソ油など。
ω6脂肪酸
リノール酸・・・適量で心疾患予防機能。大豆油、煎りクルミ、ごま油など。
γリノレン酸・・・魚類など。
アラキドン酸・・・卵、豚レバー、ワカメなど。

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現代人はオメガ6脂肪酸過剰摂取となっており、アラキドン酸から炎症亢進性エイコサノイドが過剰に生成され、慢性炎症やアレルギーの原因となっています。脳機能にも悪影響する懸念がありますから、オメガ6(リノール酸)の削減を心掛けましょう。植物油では、オリーブオイルやハイオレイックがお勧めです。

青魚は頭によい

DHAには、記憶力向上効果、知能指数向上効果、認知症予防効果、抑うつ状態予防効果、睡眠改善効果が期待されています。「青魚は頭によい」と言われるのは、青魚に豊富にオメガ3脂肪酸のDHAとEPAが含まれているからです。オメガ3脂肪酸は加熱調理に弱いので刺し身やドレッシングは合理的な摂取方法です。

https://www.maruha-nichiro.co.jp/news/pdf/110831%20dha_ninchisyouyobou_kouka.pdf

https://www.u-toyama.ac.jp/outline/publicity/pdf/2017/1212_3.pdf

https://www.nof.co.jp/upload_public/nws/20080829002_pcdha.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1996/48/10/48_10_1017/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/9/10/9_433/_pdf/-char/ja

不飽和脂肪酸の映画「ロレンツォのオイル」

近年、中鎖脂肪酸(MCTオイル)摂取による認知症予防効果を明らかにする研究が増えています。中鎖脂肪酸は、乳製品やココナッツオイルから摂取できます。コーヒーにバターやココナッツオイルをスプーン1杯入れて飲む方法がオススメです。ココナッツオイルには独特のココナッツの香りがありますが、精製したMCTオイルは無臭になりますので様々な料理に使いやすくなります。中鎖脂肪酸が分解されてできるケトン体が脳神経細胞の栄養素として働くことが分かっています。

白澤卓二、「ケトン体」食事法

※MCTオイルについて、日清オイリオの説明ページ

Screenshot of www.nisshin-mct.com

古来から絶食により「てんかん発作が減る」とされてきたことがヒントになって、アメリカで糖質制限するケトン食の研究が始まりました。食事の重量比で4分の3を脂肪により摂取するというものです。カロリーでいうと9割近くを脂肪により摂取するという方法です。ケトン食を改良して、小児の成長を妨げないことを主な目的としてカロリー制限を行わない「アトキンス食」も開発されています。てんかん患者でなくても、ケトン体による脳細胞の活性化を利用する作戦はあると思います。炭水化物の割合を減らして、タンパク質や脂質の割合を「若干」増やすという方法です。

ケトン食

ケトン食をテーマにした1997年のアメリカのテレビ映画があります。『誤診』(原題 First Do No Harm )は、メリル・ストリープ主演で、てんかんの息子を持つ母親が図書館で医学書を読み漁りケトン食療法を知り主治医に提案するも拒否され、苦難を経て大学病院でケトン食療法を受けるに至るというドラマです。いつの世も、家族の健康を願う奮闘に勝るものはないですね。

仙台勝山館、MCTオイル

日清オイリオ、MCTオイル

ブラウンシュガーファースト、有機ココナッツオイル

オーマイ、アマニ油マヨネーズ

日本製粉、アマニ油ドレッシング

日清アマニ油

トランス脂肪酸

脂肪摂取時の注意点として「トランス脂肪酸」の問題があります。加工食品の生産時に発生する脂肪酸で、HDL善玉コレステロールを減少させLDL悪玉コレステロールを増加させ、心臓病リスクが高まると懸念されています。血行不良を招くというわけですから、当然、脳の働きにも良くないですね。外食や加工食品の揚げ物は、脳の健康を考えるのであれば差し控えた方が良いでしょう。マーガリンとショートニングも、自然に存在するものではありませんので摂取量を調整しましょう。

※農林水産省の説明ページ

Screenshot of www.maff.go.jp

※厚生労働省の説明ページ

Screenshot of www.mhlw.go.jp

1998年にアメリカで「コリン」が新しい栄養素に指定され推奨摂取量が定められました。体内で神経伝達物質アセチルコリンに生合成され、認知機能や記憶力の維持に役立ちます。食品中にはリン脂質「ホスファチジルコリンPC」として含まれ摂取されています。レバー肉、赤身肉、鶏卵、大豆、魚類、野菜類などに含まれます。成人女性の妊娠期と授乳期に不足しやすいとされている栄養素です。

Screenshot of ods.od.nih.gov

※参考論文、脂質系栄養素:コリンの普及に際し、アメリカの現状から

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/26/1/26_89/_pdf

脂質の分解

炭水化物、たんぱく室、脂質摂取後の血糖値
1997 American diabetes association

脂質は摂取後6から12時間で血糖値を上げる作用があります。炭水化物やタンパク質よりも「スタミナ」があるということになります。腹持ちが良い栄養素です。炭水化物を減らして、たんぱく質や脂質を増やすことにより血糖値の上昇を抑える食生活に変えることができます。