タンパク質

タンパク質は、アミノ酸(アミノ基=アンモニアNH3から水素原子を1つ撤去したものと、カルボキシル基=COOHを有する有機化合物)が組み合わされてできる高分子化合物です。筋肉や免疫細胞を含む全ての細胞を構成する主要材料であり、代謝によりATPに分解されエネルギー源ともなる、人にとって欠かすことのできない栄養素です。生物の設計図であるDNAは、アミノ酸の配列を記録しているプログラムのようなものです。

アミノ酸が鎖状に数十程度繋がったものをペプチドと言い、数百以上繋がったものをタンパク質と言います。要するに、タンパク質も、ペプチドも、アミノ酸も、基本的に同じものと思って下さい。

いくつかのアミノ酸は、神経細胞と神経細胞の間で様々な情報をやりとりする「神経伝達物質」として使われています。そのため、アミノ酸が不足すると脳の機能が低下し、発達障害や自閉症の問題点が大きくなったり、認知症が悪化したり、うつ病などの精神疾患が悪化したりしてしまうのです。

ヒトはタンパク質を分解して様々なアミノ酸を合成して利用していますが、ヒトの体内で合成することのできない「必須アミノ酸」も9種類あり、それらは食品から摂取するしかありません。

9種類の必須アミノ酸
バリン、ロイシン、イソロイシン(この3つはBranched Chain Amino Acids = BCAAと呼ばれ特に大切な必須アミノ酸です)
トリプトファン、リシン、メチオニン
フェニルアラニン、トレオニン、ヒスチジン

必須アミノ酸は1つでも不足すると体内のタンパク質合成に支障を生じてしまいます。免疫細胞を造ることができなくなれば免疫力が低下してしまいますし、脳内で神経細胞の分裂ができなくなれば記憶力が低下してしまいます。特にトリプトファンは、幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンの材料となりますので欠乏症をなんとしても避けなければなりません。

メチオニン不足も、うつ病との関連性が指摘され、活性型メチオニン( S-Adenosylmethionine; SAM-e )は欧米では処方薬として使われています。1日200-1600mgの摂取で三環系抗うつ薬と同程度の抗うつ作用が認められたという論文もあります。メチオニンは天然の抗うつ薬とも言える栄養素なのです。

※ハーバード大学医学部うつ病臨床研究課程の論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12420702

ロイシン不足で、高齢者の筋肉量の低下=サルコペニア発症、又は虚弱=フレイルティのリスクが高くなると指摘されています。ロイシンを含むBCAAや必須アミノ酸をバランス良く摂取し、継続的なレジスタンス運動(ダンベル・スクワットなど筋肉に抵抗を掛ける運動)により、筋肉減少を予防できる可能性があります。筋肉から、記憶力を高めたり、うつ病を予防したりするメッセージ物質が分泌されますので、ロイシン摂取は重要なポイントになります。

※厚生労働省、「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」策定検討会報告書抜粋
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042643.pdf
 
トリプトファンの多い食材

蕎麦、うどん、パスタ(主食でコメだけ食べているのでは不足しがちです)
カツオ、マグロ、レバー肉、乳製品(おかずもきちんと食べないと不足しがちです)

メチオニンの多い食材  肉類(鶏ムネ、豚ヒレ)、魚類(サケ、サバ)、大豆(枝豆)、チーズ、雑穀類、玄米

ロイシンの多い食材   肉類(鶏ムネ、牛モモ)、魚類(サケ、サバ)、大豆(高野豆腐、枝豆)、チーズ

レシチンは、体内合成できるので必須アミノ酸ではありませんが、記憶物質とされるアセチルコリンの原料となるので重要な栄養素です。大豆(豆腐・納豆)か卵で摂取しましょう。

チロシンは、神経伝達物質ノルアドレナリンの原料となり、うつ抑制効果のあるアミノ酸です。肉類、チーズ類、大豆、海藻、魚介類で摂取しましょう。

カルニチンは、記憶力を高め、うつ抑制効果もあるとされているアミノ酸です。牛肉は、豚肉の4倍、鶏肉の14倍のカルニチンを含むとされ、牛肉好きにウツが少ないと言われる原因と推測されています。

 
タンパク質を摂取するときに注意すべきことは、アミノ酸スコアの高い食品を摂ることです。これは、食物に含まれるタンパク質に必須アミノ酸が必要な割合含まれているかを数値で示した物で、WHO世界保健機関と、FAO国際連合食糧農業機関が評価した割合に従って計算されます。これはアミノ酸の割合を示す数値ですので、タンパク質の量とは関係ないことに注意が必要です。現在では、アミノ酸スコアに、ヒトにおける食品タンパク質の消化吸収率を掛けた、Protein Digestibility Corrected Amino Acid Score(PDCAAS、タンパク質消化率補正アミノ酸スコア)も使われています。

https://en.wikipedia.org/wiki/Protein_Digestibility_Corrected_Amino_Acid_Score

タンパク質の量も加味して考えるならば、100gあたりのタンパク質量にPDCAAS(タンパク質消化率補正アミノ酸スコア)を掛け算した数値が参考になります。これを仮に「アミノ酸スコア量」と名付けましょう。日本人の主食であるコメだけだと大幅に不足することが分かります。蕎麦やウドンやパスタ類も併用し、肉や魚や大豆(納豆、味噌)等おかずもしっかり摂ることが大事です。

「肉好きの人には、うつ病が少ない」という仮説があります。適度な肉食も健康維持に必要な事と考えましょう。

主な食品のアミノ酸スコア、アミノ酸スコア量=100gあたりのタンパク質×アミノ酸スコア÷100

精白米 65 リジンが足りない、100gあたりのタンパク質2.5g
玄米 68 リジンが足りない、100gあたりのタンパク質2.8g
小麦粉 41 リジンが足りない、100gあたりのタンパク質8.3g
そば粉 92 リジンが足りない、100gあたりのタンパク質14g
大豆 100
卵 100
牛乳 100
牛肉・豚肉・鶏肉 100
魚類 100
プロセスチーズ 91 メチオニンが足りない
ジャガイモ 68 ロイシンが足りない
里イモ 84 イソロイシンが足りない
トマト 48 ロイシンが足りない
みかん 50 ロイシンが足りない
 

タンパク質は「酵素」として様々な代謝を触媒します。生卵がゆで卵になるように、タンパク質は60度以上で変性してしまいますから、酵素タンパク質を摂取するときは、なるべく加熱せず食べることが推奨されます。生野菜、生の刺身、生ハムなどです。酵素が働く最適温度は35~40度と言われており、体温が低いひとは酵素の働きも低下してしまいます。39度の湯船に20分浸かる入浴法はこれを補う効果があるでしょう。

http://report.ajinomoto-kenko.com/suimin/kaiketsu.html

グリシンとテアニンは、睡眠アミノ酸と呼ばれ、睡眠の質を高め、脳の働きを高める機能があるとされています。

味の素、グリナ(グリシン含有健康食品)

アサヒ、ネナイト(テアニン含有健康食品)

ガンマアミノ酪酸は、30mgの摂取後1時間のストレス軽減作用があるという研究もあります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/61/3/61_3_129/_pdf/-char/ja

グリコ、GABA
マルマン、GABA