言葉のクスリ、菜根譚を読む6

菜根譚ビギナーズ・クラシックス、湯浅邦弘

処世術を教えてくれる中国古典名著「菜根譚」ですが、養生訓として読むこともできると思います。

前集26条
飽後思味(あいてのちあじをおもひても)
則濃淡之境都消(すなわちのうたんのきょうもすべてきゆ)
色後思淫(しきののちいんをおもひても)
則男女之見盡絶(すなわちだんじょのけんことごとくたゆ)
故人常以事後之悔悟(ゆえにひとはつねにじごのかいごをもって)
破臨事之痴迷(りんじのちめいをやぶらば)
則性定而動無不正(すなわちしょうはさだまりただしからざるなくうごかむ)

※意訳
満腹になるまで飽きるまで食べてから、どんな味だったか思い出そうとしても、
味の濃い薄いも忘れてしまって思い出せないものだ。
姦淫しつくした後に、どんな交わりであったか思い出そうとしても、
男女関係の機微もすべて消え去って思い出せないのだ。
だから、ひとはいつも、この事後の後悔の念を糧として、
一時の気の迷いというものを打破できれば、
精神も安定し、正しい道を歩むことができるのだ。

※鑑賞
「飽食の時代」という言葉がありますが、飽きるまで食べてしまって満腹になってしまえば、もう味も関係なくなってしまう。折角の食事なのに、味が分からないなんて悲しいですね。だから、満腹はやめなさいと教えているわけです。

男女関係だって節度なくとっかえひっかえ交際するようでは、逆に男女関係の良さが失われてしまう。男女関係の機微を味わうにはプラトニックラブを重視せよという教えなんですね。

腹八分の教えは、生活のあらゆる場面で活きてくるというわけです。

※参考記事

断食でサーチュイン遺伝子のスイッチを入れる

言葉のクスリ、菜根譚を読む5

菜根譚ビギナーズ・クラシックス、湯浅邦弘

処世術を教えてくれる中国古典名著「菜根譚」ですが、養生訓として読むこともできると思います。

前集13条
経路窄処、留一歩与人行(けいろのせまきところは、いっぽをとどめてひとのゆくにあたえ)
滋味濃的、減三分譲人嗜(じみのこいものは、さんぶをげんじひとのたしなむところにゆずる)
此是渉世一極安楽法(このこれよをわたるにひとつのきわみのあんらくのほうなり)

※意訳
道の狭いところは一歩立ち止まって人に道を譲り、味の濃い豪華な料理は3分の1を減らして隣の人に与える。これこそ、世の中を渡っていくためのたった一つの、究極の、安楽な方法なのである。

※鑑賞
人に道を譲るというのは、「先に行かせる」ということですね。昨今問題になっている「あおり運転」とは正反対の通行方法です。そして、一人前の料理が目の前に来ても、3分の1を隣の人にあげちゃうんです。3分の1減らすと約66パーセントになります。昔から「腹八分目は医者要らず」と言いますが、菜根譚では「腹6割6分」という教えなんですね。

※参考記事

断食でサーチュイン遺伝子のスイッチを入れる

言葉のクスリ、菜根譚を読む4

菜根譚ビギナーズ・クラシックス、湯浅邦弘

処世術を教えてくれる中国古典名著「菜根譚」ですが、養生訓として読むこともできると思います。

前集7条
醲肥辛甘非真味(じょうひしんかんはしんみにあらず)
真味只是淡(しんみはただこれたんなり)
神奇卓異非至人(しんきたくいはしじんにあらず)
至人只是常(しじんはただこれじょうなり)

※意訳
濃い酒や濃厚な味わいの肉に、香辛料や甘味料で味付けした食事など本当の食事ではない。本当の食事というのは、ひたすら淡白なものだ。

神のように優れた人物や、卓越して並ぶ者のない人物は、道を極めた人とは言えない。道を極めた人というのはひたすら平凡であるのだ。

※鑑賞
濃い酒というのは高アルコールということでしょうか。濃厚な味わいの肉というのは、高カロリーということでしょうか。香辛料も糖分も、適量であれば体によいものですが、沢山摂ると体に良くないんですね。塩分過多も良くないでしょう。

「淡白」というのは薄味ということなんですが、究極的に言えば「味付けしない」ということで宜しいかと思います。生野菜を味付けせずにがぶりと食べる。刺身に醤油をつけずに頂く。納豆もタレをかけずに食べる。玄米麦飯もおかず無しで食べる。最初は味が無くて途方に暮れますが、慣れてくると意外に味わいがあると気付きます。その味を楽しめということですね。

食事以外でも、「神奇卓異」を目指す必要は無いということなんですね。ようするに「頑張るな」というアドバイスなんですね。「頑張らないで良いんだよ、普通が一番なんだよね、そういうのがストレス無くて良いでしょ」ということです。