ブレインフードのサイトですが、思わず書籍もご紹介いたします。著者はケンブリッジ大学の精神医学科長の教授です。研修医時代に炎症性疾患であるリウマチ患者に「うつ」合併症を診察したことをきっかけとして「うつ」と炎症の関係を考え始め、自分自身が歯科治療直後に「うつ」症状を体験し、免疫精神医学の世界に興味を持つようになったということです。著者は炎症が「うつ」を引き起こす原因を、「自然選択しかないだろう」と推測しています。ケガが病気などで炎症を起こしている個体は、「うつ」状態で寝床で休んでいたほうが生き延びる可能性が高かったということでしょうか。「うつ病とは、人間という生命体が、過酷なこの世界で生き延びようとするための反応だと考えられるのだ。」と述べておられます。
※小児期の血清インターロイキン6およびC反応性タンパク質と若年成人期のうつ病および精神病との関連
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25133871/
こちらの研究では、南西イングランド生まれの1万5千人の子供のうち、9歳時点でサイトカイン濃度が上位3分の1に含まれる子供は、その時点でサイトカイン濃度が低い子供に比べて18歳時点でうつ病になる確率は1.5倍になったということです。当然ながら、9歳時点ではサイトカイン濃度が高い子供にもうつ症状は見られなかったということです。
著者は、炎症と精神疾患に関連があるとしても、臨床医は抗サイトカイン薬や抗炎症薬を処方すること(ドラッグリパーパシング)をためらうだろうと述べています。例えば、アスピリンのような抗炎症薬には抗うつ薬としての臨床試験は全く行われておらずエビデンスがないことと、アスピリンには潰瘍や出血を引き起こす副作用のリスクがあり安全上のリスクが否定できないということです。
※参考記事、降圧薬の 新型コロナウイルス感染症の重症化への影響について
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2020/202008matsuzawa_rasi.html
高血圧の治療に使われるACE阻害薬やARBも抗サイトカイン作用があるとされますが、新型コロナウイルスによるサイトカインストームにも一定の効果が期待されています。
著者が挙げている炎症の原因となりうる事項をご紹介いたします。
- 肥満
- 加齢
- 冬季(感染症、日照時間)
- 社会的ストレス
- 身体的ストレス
- 歯周炎(歯周病)
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 慢性大腸炎
- 運動不足
- 睡眠不足
- 過度の飲酒
ということで、従来当サイトでも抗炎症食品はブレンフードですよと御紹介して参りましたが、免疫精神医学の専門家の間でも、そのような知見が集積されつつあるようです。
※参考記事
5つの慢性炎症対策でウツ撃退
慢性炎症対策食品
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