コールドウェル・B・エセルスティン、血管をよみがえらせる食事
世界一の心臓病治療センターともいわれるクリーブランドクリニックの外科医であるエセルスティン博士が、バイパス手術後に心臓病を再発する患者や同僚医師の心臓発作を目の当たりにして、心臓外科手術だけでは患者を救えないと痛感し、また自分自身の家系が全員早死にだったため手術以外の選択は無いか考え、「低脂肪でプラントベースの栄養摂取」という対策を思いつき、自分自身および患者に対してこれを実践し20年後にも生きた証として心臓病患者が生存し続けているという物語です。血管が脂肪で詰まるなら脂肪を抜けば良いんじゃないかという発想なんですね。
クリントン元大統領も10年前に本書(およびキャンベル博士の「チャイナ・スタディー」)を読んで3か月で11キロの減量に成功し、持病の心臓病を克服することに成功したと言います。アメリカでヴェジタリアンやヴィーガンが多いのは、日本よりも食事療法の啓蒙活動が盛んなのかもしれません。
冒頭の写真ページには、栄養摂取プログラムにより、冠動脈の狭窄が改善している証拠写真が掲載されています。食事だけで!改善しちゃっています!血流が改善しているのです。当然、心臓疾患だけでなく脳血管障害にも効果が期待できますので「脳の働き」にも期待が持てることになります。それはブレインフード作戦でもあるのです。
血管の内側に堆積しているプラークキャップ(脂肪やコレステロールに覆われた血管内皮細胞)が、プラントベースの食事の継続摂取により縮小していく説明図が掲載されています。
これは良くある予防の話じゃないんですね、Reverse Heart Desease 心臓病を回復させるという話なんですね。食生活によって、血管内のプラーク(脂肪)を除去しちゃうという話なんです。食事で脂肪を摂るのをやめ、脂肪の飢餓状態にして、血管内の脂肪を除去してしまう作戦なのです。現代人は脂肪の摂りすぎなので、その食生活を改めるということです。手術の代わりに行われる食事療法なので、それはかなり過激な内容です。第8章の内容の抜粋を御案内致します。
避けるべき食物
- 顔と母親があるもの全て(肉類、卵、魚類)
- 乳製品(バター、チーズ、牛乳)
- オイル(一切の精製油)
- 精製穀物
- ナッツ類
食べることができる食品
- 野菜
- 豆類
- 全穀類、全粒穀物。
- 果物(ジュースやスイーツなど加工食品は回避)
- 飲み物(水、発泡ミネラルウォーター、ノンファット豆乳、コーヒー、お茶類、アルコールは控え目に)
推奨するサプリメント
- 複合ビタミン剤(葉酸、ビタミンB6、B12)
- カルシウム(50歳で1日1000mg、60歳以上は1200mg)
- ビタミンD(50歳で1日25μg、60歳以上は30μg)
- オメガ3脂肪酸(精製油ではなく、フラックスシード粉末として毎日大さじ1杯)
- コレステロール低下薬(必要に応じて医師の処方)
これは「あらゆる脂肪摂取をやめる」、つまり「脂肪の断食」作戦です。脂肪を抜くために動物タンパクの摂取もやめてしまいます。ちょっと衝撃的な内容ですが、心臓手術に匹敵する治療法なので生半可なことでは無いわけです。地中海ダイエットで有名なオリーブオイルなど健康に良いとされる油もカットしちゃいます。オメガ3だって精製油ではなくフラックスシード粉末として摂取すべきという見解です。
乳脂肪3.8パーセントの牛乳は重量に対して3.8パーセントの脂肪を含みますが、摂取カロリーに換算すると51パーセントになります。同様に脂肪分1パーセントの低脂肪乳でも、摂取カロリーの21パーセントが脂肪分となります。著者は脂肪摂取量を総カロリーの10パーセント以下とすべきことを提言しておられます。
多くの人々が、国の健康機関や人間ドッグ協会が正常値と定めたコレステロール値を守って生活していたのに心臓病になってしまったといいます。著者はコレステロール値は150mg/dl以下とすべきであると主張しています。
いわゆる低炭水化物ダイエットとの関係性はどのように考えれば良いのでしょうか。低炭水化物ダイエットで血糖値を低下させている糖尿病患者さんは沢山居ます。低炭水化物ダイエットでは、タンパク質と脂質は遠慮せず摂取し、炭水化物の割合を総カロリーの半分以下まで減らすと言っているんですね。
そうであれば、糖尿病の人や血糖値高めの人(高齢者)は、従来通り血糖値を維持するのに必要な程度の低炭水化物を継続し、「そこから脂肪を抜く」ということになるのでしょうか。動物食ベースの低炭水化物ダイエットよりも、植物食ベースの低炭水化物ダイエットを選択すべきということなのでしょうか。植物食ベースの低炭水化物ダイエットって日本のお寺の精進料理とほとんど同じものですね。
※動物食ベースの低炭水化物ダイエットが総死亡率を増加させたが植物食ベースの低炭水化物ダイエットは総死亡率を低下させた報告
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20820038/
いつも思うのですが、人類の遺伝子は1万年前とほとんど変わらないのに、農業革命以降の食生活の変化が激しすぎるんですね。自分自身の遺伝子と折り合いをつけて生きていくために、現代人は1万年前の狩猟採集民の質素な食生活に近づけるべきなのかもしれません。1万年前には存在しなかった精製技術を使った穀類や油脂類は危険な食べ物かもしれないのです。whole grain foods 運動、raw foods 運動はそういうところを意識しているのでしょう。
この本には載っていませんが、血糖値高めの高齢者や糖尿病患者が実践すべき脂肪抜きダイエットはあるはずです。これは継続審議の問題にしたいと思います。この問題は継続して調査していきたいと思います。
※参考商品
コメントを残す