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養生訓その4、入浴でウツを撃退せよ!

養生訓は、1712年に福岡藩の儒学者、貝原益軒によって書かれた健康指南書です。84歳で亡くなる前年83歳の時の著作です。当時の平均寿命は35歳程度ですから84歳が如何に長寿であるか分かると思います。健康診断も、抗生物質も、抗ウイルス薬も何も無い時代に84歳まで生きたことがどれほどインパクトあることか想像に難くありません。

貝原益軒は、現代の二重盲検によるエビデンスの確立法などの技法やツールを一切使わずに、日々の観察、思索と実践から、膨大な健康法を編み出しました。読んでみるとなかなか抽象的で難しい部分もありますが、「脳に良い健康法」もいくつかありましたので、すこしずつ御紹介してみたいと思います。

著作権がありませんので、ネットでも読めますが、書籍を手にとって読むことも有益だと思います。昼食後に、養生訓を手に公園に出かけ、少し読んで帰ってくるような健康法が考えられます。

※wikipedia養生訓
https://ja.wikipedia.org/wiki/養生訓

※中村学園大学によるWEB版養生訓
http://www.nakamura-u.ac.jp/library/kaibara/archive03/text01.html

※書籍なら
「すらすら読める養生訓」立川昭二

5巻49訓

温泉は、諸州に多し。入浴して宜しき症あり。あしき症あり。よくもなく、あしくもなき症有。凡(およそ)此三症有。よくゑ(え)らんで浴すべし。湯治(とうじ)してよき病症は、外症なり。打身(うちみ)の症、落馬したる病、高き所より落て痛める症、疥癬(かいせん)など皮膚の病、金瘡(きんそう)、はれ物の久しく癒(いえ)がたき症、およそ外病には神効(しんこう)あり。又、中風(ちゅうぶ)、筋引つり、しゞまり、手足しびれ、なゑたる症によし。内症には相応せず。されども気鬱、不食、積滞(しゃくたい)、気血不順など、凡(およそ)虚寒(きょかん)の病症は、湯に入あたためて、気めぐりて宜しき事あり。外症の速(すみやか)に効(しるし)あるにはしかず、かろく浴すべし。又、入浴して益もなく害もなき症多し。是は入浴すべからず。又、入浴して大に害ある病症あり。ことに汗症(かんしょう)、虚労(きょろう)、熱症に尤(も)いむ。妄(みだり)に入浴すべからず。湯治(とうじ)して相応せず、他病おこり、死せし人多し。慎しむべし。此理をしらざる人、湯治(とうじ)は一切の病によしとおもふは、大なるあやまり也。本草(ほんぞう)の陳蔵器(ちんぞうき)の説、考みるべし。湯治(とうじ)の事をよくとけり。凡(そ)入浴せば実症の病者も、一日に三度より多きをいむ。虚人(きょじん)は一両度なるべし。日の長短にもよるべし。しげく浴する事、甚(はなはだ)いむ。つよき人も湯中に入(り)て、身をあたため過すべからず。はたにこしかけて、湯を杓(ひしゃく)にてそそぐべし。久しからずして、早くやむべし。あたため過(すご)し、汗を出すべからず。大にいむ。毎日かろく浴し、早くやむべし。日数は七日二十七日なるべし。是を俗に一廻(めぐり)二廻と云。温泉をのむべからず。毒あり。金瘡の治のため、湯浴(ゆあみ)してきず癒(いえ)んとす。然るに温泉の相応せるを悦(よろこ)んで飲まば、いよいよ早くいえんとおもひて、のんだりしが、疵、大にやぶれて死せり。

意訳

温泉は、至る所にあるが、入浴して良い症状と良くない症状がある。どちらでもない症状もある。だいたいこの3つに分けられる。良く選んで入浴しよう。

湯治(とうじ)して良い病症の第1は、外症である。打身(うちみ)の症、落馬した怪我、高い所より落ちて痛める症、疥癬(かいせん=ダニ感染)など皮膚の病、金瘡(きんそう=切り傷)、はれ物の久しく癒(いえ)がたき症、およそ外病には良く効くものだ。また、中風(ちゅうぶ=脳出血後遺症のマヒ)、筋肉の引きつり、筋肉の縮まり、手足しびれ、手足に力が入らない症状に良い。

湯治は体の内側の症状には効かない。だが、うつ病、食欲不振、胃のもたれ、血行不良、冷え性などには、湯船に入って温めて血行を良くして改善することがある。ただ、外傷が改善するスピードには及ばない。軽く入浴すると良い。

また、入浴して良くも悪くもない症状も多い。これは入浴しない方が良い。

また、入浴しておおいに有害な症状もある。特に多汗症、肉体疲労、発熱時には良くない。決して入浴すべきではない。湯治に適さないのだ。湯治して他の症状が悪化して亡くなる人も多い。やめた方が良い。これを知らずに、湯治は万病に効くと思っている人は大間違いである。

中国唐代に本草拾遺を著作した陳蔵器(ちんぞうき)の説をよく思い出すべきである。彼は湯治のやり方を次のように注意していた。

体力のある病人も1日に3度よりも多く入るべきではない。体力の無い人は日に2度にするべきだ。季節にもよるが、頻繁に入浴することは特に良くない。体力がある人も湯船に入って身を温め過ぎるのは良くない。湯船の端に腰掛けて、湯をヒシャクで体に掛ければ良いのだ。長風呂はせず、早めに出よ。温めすぎて汗を出すな。大いに良くない。毎日かるく入浴し、早く出よ。湯治の日数は、7日から27日までとせよ。これを俗に一廻(めぐり)二廻と言う。温泉は飲むな、毒である。昔、切り傷の湯治が効いて良くなってきたのを喜んで、温泉を飲んだらもっと良くなるかと思って飲んだ人が居たが、傷が化膿して亡くなってしまったことがある。

鑑賞

なんとも、湯治の奥深い世界を益軒先生は教えてくれますね。有害な症状では「湯治したら死ぬからやめた方がよい」なんて衝撃的です。入浴の効用と害悪をこれほど深く考えている現代人は少ないのではないでしょうか。やはり、現代医薬や医療機器が無い時代ですから、入浴の作用についても非常に注意深く観察して結論を得ていたのでしょう。

この訓で特に重要なのは、「入浴がうつ病に良い」という教えですね。うつ病に関する一般書を何冊か読みましたが入浴の事が書いてある本はありませんでした。「そうか!入浴すれば良いのか!」という驚きですね。しかも、その入浴法は「かろく浴すべし」ということです。ぬるめのお風呂で発汗しないように入れ、と言うことなんですね。これを読んで「42度以上の熱い風呂は交感神経を刺激するからリラックスしたいときには合わない」という記事を思い出しました。夜は、38度の半身浴で15分程度入る入浴法が良いのかなと思いました。

※兵庫医科大学、ここらいふVol. 3(2016年1月号)より
http://www.corp.hyo-med.ac.jp/library/guide/activity/public/pdf/03p02_04.pdf

※wiki湯治
https://ja.wikipedia.org/wiki/湯治

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