2020年の認知症予防

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2019年12月24日、日本人の食事摂取基準2020年版が発表されました。

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

その中から、ブレインフードに関係する部分を引用します。報告書418ページと419ページの部分です。

---引用はじめ

4 認知機能低下及び認知症と栄養との関連
 血管性の認知症のみならず、アルツハイマー病の発症についても、生活習慣及び生活習慣病と強い関連があることが指摘され始めている。今回は、代表的な栄養素と認知機能低下、認知症発症との関係を検討したが、以下に示すように、各栄養素との関係は発症予防を目的とした目標量を示すほど十分な証拠は今のところなく、文献的考察をするに留めた。

4─1、葉酸、ビタミン B6、ビタミン B12
 ホモシステインは、必須アミノ酸メチオニンの代謝過程で生成され、その代謝には、葉酸、ビタミン B6、ビタミン B12 が関与し、いずれのビタミンが欠乏しても血中ホモシステイン濃度は上昇する。ホモシステインは、血管への影響の他、神経毒性が指摘されており、長らく血管性認知症やアルツハイマー病との関連が指摘されてきた。認知症患者では血中ホモシステイン濃度が高く、血管性認知症患者ではアルツハイマー病患者よりもホモシステイン値が高いとするメタ・アナリシスがある他、ホモシステイン血中濃度の高値と認知機能低下、認知症発症との関連の可能性があることもメタ・アナリシスによって支持されている。
 一方、ビタミン B12 や葉酸と認知機能との関連は、これらのビタミン欠乏により上昇するホモシステイン濃度との関連で調査・研究が進められてきた。横断研究、症例対照研究では認知症とこれらのビタミン濃度との関連が種々報告されてきたが、一定の関連性を見いだすには至っていない。
さらに、これらのビタミンによる介入研究も幾つか実施され、メタ・アナリシスも幾つか報告されている。しかしながら、葉酸やビタミン B12 による介入ともに認知機能に対して有意な効果は認められていない。

4─2、 n─3 系脂肪酸
 前向き観察研究では、主に魚類由来長鎖 n─3 系脂肪酸の摂取量が少ないと認知機能の低下や認知症発症に関与するとの報告が存在する。その一方で、関連を認めないとする報告も複数存在する。介入研究は限られているが、現時点で確認された三つの試験の全てにおいて認知機能低下抑制効果などの介入効果は認められていない。
 また、既にアルツハイマー病の診断を受けている者を対象とした無作為化割付比較試験(RCT)の結果をまとめたメタ・アナリシスでは、アルツハイマー病の認知機能・日常生活機能・精神症状
に対して n─3 系脂肪酸の効果は認められていない。

4─3、ビタミン D
 血中ビタミン D 濃度と認知機能低下との関連を検討した前向きコホート研究をまとめたシステマティック・レビューでは、血中ビタミン D 濃度の低値は認知機能低下のリスクであると結論したものもあるが、その後、関連を否定するコホート研究が複数報告されている。
 また、アルツハイマー病を対象とした七つの症例対照研究のメタ・アナリシスでは、認知機能が正常な者と比較し、アルツハイマー病患者では、血清 25─ ヒドロキシビタミン D 濃度が有意に低値であった。認知症の発症に関する七つのコホート研究のシステマティック・レビューでは、血中ビタミン D 濃度が 35 ng/mL までの範囲では、ビタミン D の血中濃度が高い方が認知症の発症リスクが低くなるが、それ以上の血中濃度では、明確な関連を見いだせないとされた。
 このように、ビタミン D 摂取量の不足が認知機能低下と関連する可能性はあるものの、摂取量の増加が認知症の発症予防になるとする根拠はない。

4─4、ビタミン E、ビタミン C
 抗酸化機能を有する栄養素と認知機能並びに認知症との関連も注目されており、主にビタミン E及びビタミン C との関連を検討した観察研究が多く報告されている。ビタミン C と認知機能に関するシステマティック・レビューの結果では、認知機能正常者では、低下者と比較し、血中ビタミン C 濃度が高値である傾向があるものの、ビタミン C 濃度と認知機能の間に相関は認められなかった。
 ビタミン E 及びビタミン C の摂取と認知症発症予防の効果については、通常の食品を用いた検討の他、サプリメントを用いた検討も行われてきた。これらのビタミンの単独又は複合摂取は、認知症発症に対して予防的に作用するとの報告がある一方で、無効とする報告も存在する。
効果があるとする研究の中には、十分量のビタミン E とビタミン C を併用した場合に、より強い予防効果があり、単独では無効又は効果が減弱するという観察研究の結果がある。このように、ビタミン E 及びビタミン C の摂取と認知症発症予防の一致した結果が得られていない状況にある。

---引用おわり

莫大な税金を掛けて、日本中から偉い先生方を連れてきて作った最新の報告書ですから是非活用致しましょう。上記の引用部分のポイントを列挙致しますので参考になさって下さい。

・葉酸、VB6、VB12は認知症予防に有益な可能性がある。

・魚類由来n3系脂肪酸は認知症予防に有益な可能性がある。

・ビタミンDは認知症予防に有益な可能性がある。

・ビタミンCとEの複合摂取が認知症予防に有益な可能性がある。

あまり新奇な情報ではありませんが、膨大な論文を検討した結果なので説得力がありますね。ビタミンDの摂取目安量は2015年版では5.5マイクログラムでしたが、2020年版では8.5マイクログラムに引き上げられました。ちなみに米国NIHでは20マイクログラム(70歳以上)となっています。

「マルチビタミン」と「DHA・EPA」のサプリメントは有益な可能性があると分かります。普通の食事で言えば、「好き嫌いを無くし」、「魚を沢山食べよう」ということになります。

※参考記事

アルツハイマー病など認知症増加の原因と発症メカニズム研究の転換(上)

こちらの記事ではアルミ鍋やアルミ弁当箱を使わない予防が提唱されています。また、仕事や運動(筋力トレーニング、有酸素運動)など活動的な生活も予防になるようです。頭を使うこと、文章を書くこと、人とコミュニケーションすることが必要です。喫煙禁止で、血糖や血圧コントロールも必要です。

アルツハイマー病など認知症増加の原因と発症メカニズム研究の転換(下)

こちらの記事では、鉄剤補給、ビタミンBCDE葉酸補給、当帰芍薬散、抑肝散、牡丹皮、黄連解毒湯、八味地黄丸、帰脾湯、遠志、半夏厚朴湯、四物湯、補中益気湯、十全大補湯、イチョウ葉エキス、朝鮮人参、陳皮、イトヒメハギの根、丹参、薬用サフラン、地中海食、魚介類、カレー料理、カカオ製品、赤ワイン、緑茶、ビール、などの活用が提案されています。

※参考食品

DHC、マルチビタミン

アサヒ、DHA

大塚製薬、ビタミンD


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