養生訓その6、夏バテ防止法2

養生訓は、1712年に福岡藩の儒学者、貝原益軒によって書かれた健康指南書です。84歳で亡くなる前年83歳の時の著作です。当時の平均寿命は35歳程度ですから84歳が如何に長寿であるか分かると思います。健康診断も、抗生物質も、抗ウイルス薬も何も無い時代に84歳まで生きたことがどれほどインパクトあることか想像に難くありません。

貝原益軒は、現代の二重盲検によるエビデンスの確立法などの技法やツールを一切使わずに、日々の観察、思索と実践から、膨大な健康法を編み出しました。読んでみるとなかなか抽象的で難しい部分もありますが、「脳に良い健康法」もいくつかありましたので、すこしずつ御紹介してみたいと思います。今回も夏バテ防止法を御案内致します。

著作権がありませんので、ネットでも読めますが、書籍を手にとって読むことも有益だと思います。昼食後に、養生訓を手に公園に出かけ、少し読んで帰ってくるような健康法が考えられます。

※wikipedia養生訓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%8A%E7%94%9F%E8%A8%93

※中村学園大学によるWEB版養生訓
http://www.nakamura-u.ac.jp/library/kaibara/archive03/text01.html

※書籍なら
「すらすら読める養生訓」立川昭二、講談社+α文庫

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6巻13訓

夏は、発生の気いよいよさかんにして、汗もれ、人の肌膚(きふ)大いに開く故外邪入やすし。涼風に久しくあたるべからず。沐浴の後、風に当るべからず。且夏は伏陰とて、陰気かくれて腹中にある故、食物の消化する事おそし。多く飲食すべからず。温(あたたか)なる物を食ひて、脾胃をあたゝむべし。冷水を飲べからず。すべて生冷の物をいむ。冷麪多く食ふべからず。虚人は尤(もっとも)泄瀉(せっしゃ)のうれひおそるべし。冷水に浴すべからず。暑甚き時も、冷水を以(もって)面目(かおめ)を洗へば、眼を損ず。冷水にて、手足洗ふべからず。睡中に、扇にて、人にあふがしむべからず。風にあたり臥べからず。夜、外に臥べからず。夜、外に久しく坐して、露気にあたるべからず。極暑の時も、極て涼しくすべからず。日に久しくさらせる熱物の上に、坐すべからず。

意訳

夏は、身体が放熱しようとして汗を出し、皮膚の毛穴も開くので、環境の悪影響を受けやすい。涼しい風があるからと言って当たりすぎてはいけない。風呂の後に風に当たってもいけない。夏は伏陰といって、陰気が隠れて腹の中に籠もるので、食べた物の消化が遅くなりやすい。暴飲暴食は禁物である。温かいものを食べて胃腸を温めよ。冷水は飲んではいけない。生ものや冷たいものを忌避しなさい。冷麺も食べ過ぎてはいけない。虚弱体質の人は最も下痢に注意すべきである。水風呂や水シャワーを浴びてはいけない。最も暑い時期でも、冷水で顔を洗えば目に悪い。冷水で手足を洗うのも良くない。寝ているときに扇であおいで貰うのも良くない。風に当たって寝てはいけない。夜に外で寝るのもダメだ。夜、涼しいからと言って、外に長く居て夜露に当たるべきではない。最も暑い季節でも、涼しくしすぎてはいけない。直射日光に当たって熱くなっているものの上に座ってはいけない。

8巻9訓

衰老の人は、脾胃よはし。夏月は、尤慎んで保養すべし。暑熱によつて、生冷の物をくらへば泄瀉(せつしゃ)しやすし。瘧痢(ぎゃくり)もおそるべし。一たび病すれば、大(い)にやぶれて元気へる。残暑の時、殊におそるべし。又、寒月は、老人は陽気すくなくして寒邪にやぶられやすし。心を用てふせぐべし。

意訳

元気の無い老人は胃腸が弱っている。夏期は最大限注意して保養しなさい。暑いからと言って冷たい物を食べると下痢しやすいのだ。慢性の下痢には注意しなければならない。これに罹ってしまうと、身体を壊して元気を失ってしまうのだ。残暑の時期には特に注意が必要だ。寒い季節も、老人は免疫力が低いので風邪をひきやすいのだ。常に意識して予防しなさい。

8巻18訓

老人は、大風雨、大寒暑、大陰霧の時に外に出(いず)べからず。かゝる時は、内に居て、外邪をさけて静養すべし。

意訳

老人は、風雨の激しい時、暑い時、寒い時、濃霧の時は、外出してはならない。このような時は家の中で環境の害を避けて静養しなさい。

鑑賞

どうですか?益軒先生の実践的な夏バテ防止法!暑い時の外出を避けるべしというのは分かりますが、冷たいものを食べるなというのに加えて「温かい物を食べよ」、というのは厳しい御指導ですね!冷麺を食べ過ぎるな、という御指導もありますね。風呂上がりに扇風機に当たりながらキンキンに冷えたビールを頂く、とかそういうことは厳禁となっております(泣)!

夏は下痢になりやすいという注意も大切ですね。温かい物を少し食べて、胃腸の調子を維持するという作戦でしょうか。

シオノギ、ベリチーム酵素(消化薬)

現代ならドラッグストアで消化薬の酵素を買ってきて消化力を補う作戦もあるのですが、こういうのは益軒先生から見るとどのように映るんでしょうかね。「自然の力で乗り切らないとダメだよー」と言われるかも知れませんねえ。