莫大な費用と時間を掛けて作成された日本人の食事摂取基準、活用しない手は無いですね。
この2015年報告書で興味深い記述を見つけました。脂質に関する項目の125ページから引用します。
コレステロールは体内で合成できる脂質であり、12~13 mg/kg 体重/日(体重 50 kg の人で 600~650 mg/日)生産されている )。摂取されたコレステロールの 40~60% が吸収されるが )、個人間の差が大きく遺伝的背景や代謝状態に影響される。このように経口摂取されるコレステロール(食事性コレステロール)は体内で作られるコレステロールの 1/3~1/7 を占めるのに過ぎない。また、コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、逆に少なく摂取するとコレステロール合成は増加し、末梢への補給が一定に保たれるようにフィードバック機構が働く。このためコレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではない )。
なんと、コレステロールというのは、食事から摂ったもの(食事性コレステロール)は2割程度しか血中濃度に反映されないというわけです。脂質異常症や、高コレステロール血症、動脈硬化の観点からは、8割の対策は「コレステロール制限ではない!」ということなんですね。鶏卵についても興味深い記述がありますので、引用します。脂質に関する項目の125ページです。
動脈硬化関連疾患に関しては、卵(鶏卵)はコレステロール含有率が高く、また日常の摂取量も多いため、卵の摂取量と疾患リスクを調べることにより、コレステロール摂取による疾患リスクが推定されている。卵の摂取量と動脈硬化性疾患罹患との関連を調べた 2013 年のメタ・アナリシスでは、卵の摂取量と冠動脈疾患及び脳卒中罹患との関連は認められていない。日本人を対象にしたコホート研究の NIPPON DATA80でも、卵の摂取量と虚血性心疾患や脳卒中による死亡率との関連はなく、1 日に卵を 2 個以上摂取した群とほとんど摂取しない群との死亡率を比べても有意な差は認められていない。卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との関連を調べた JPHC 研究 でも、卵の摂取量と冠動脈罹患との関連は認められていない。また、糖尿病患者においても、卵の摂取量と冠動脈疾患罹患との関連は認められておらず、横断的な卵の摂取量と糖尿病有病率との関連も認められていない。
卵の摂取量が、毎日1個でも2個でも関係無いというエビデンスが報告されているんですね。結局2015年の食事摂取基準では、コレステロールの摂取上限量の設定が見送られる事になりました。「コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため、目標量の算定は控えた。」ということです。卵はアミノ酸スコアも100ですし、安価で優良なタンパク源ですから、毎日1個をむしろ積極的に摂っていくべきかと思いました。
脂質異常症の項目、412ページより、図1を引用します。
それでも、食事で対策できることは、「コレステロール、飽和脂肪酸(肉類)、糖類、総カロリーを控える」「肥満解消する」「不飽和脂肪酸(魚類)、水溶性食物繊維を積極的に摂る」ということなんですね。水溶性食物繊維は、大麦、もち麦、ライ麦、抹茶、カレー粉、ココア、ケール、ニンニク、大豆、ゴボウなどで摂れます。
食事性コレステロール以外の8割の対策は、「適正体重」と「適正運動量」ということになります。人類の遺伝子は1万年前とほとんど変わっていないそうです。だから生活様式も1万年前と同じであることが理想的であり、現代文明の産物である、電車バス自動車を使わず、とにかく歩けってことなのでしょう。電車やバスに乗るときは1駅手前で降りるようにしましょう。ギリギリ許せるのが自転車ですかね。電動自転車はダメです。とにかくカラダを動かして汗をかけってことなのでしょう!